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噛む健康・カラダづくり

私たちの歯は高性能!大切にするべき理由とは
~今日のケアが未来の健康やQOL(生活の質)を左右する~

2025.01.30

毎日の食事を美味しく食べられていますか?
好きなものを美味しく食べるためには健康なお口の状態を保つことが重要です。

それには、きちんとしたケアが大切!!
歯を失っても治療すればOK!と考えて、ケアを怠っているとしたら危険です!!

見た目は同じような「歯」ですが、自分の歯(天然の歯)と義歯やインプラントなどの人工の歯では大きな違いがあります。

 

  

1.自分(天然)の歯を失うということ

  

~歯を失うデメリット~

・自分の歯で噛んで食べられる喜びの喪失、食感など食べたときの感覚が鈍くなる
歯の本数が少ないと、当たり前のように噛めていたものが噛めなくなってしまいます。また、食べたときに感じる歯ごたえなどの食感も感じにくくなります。

 

・歯垢(プラーク)の蓄積
歯が抜け、隙間ができるとそこに歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。プラークには虫歯や歯周病の原因となる細菌がたくさん存在しているため、歯を失うリスクが高くなります。

 

・噛み合わせに影響する 
歯列全体のバランスを崩しかねず、延いては顔や身体の歪みにつながることもあります。

 

・顎の骨が痩せていく可能性も
 歯を失うと、その部位の骨が溶解し始めます(骨吸収)。一度骨が吸収されてしまうと、元に戻す方法は外科的な手術以外にありません。顎の骨を健康に保つためにも、自分の歯をできるだけ保持することが重要です。

 

・他の歯の寿命が短くなるリスクがある
 歯を失ってしまった場合、その歯を補う治療法としてブリッジや入れ歯、インプラントという治療法がありますが、入れ歯やブリッジの場合は両隣の歯に大きな負担がかかります。負担がかかることで結果的に他の歯も失うリスクが高くなります。

 

・発声、発音が不明瞭になることも
歯は、発声や発音にも深く関わっています。歯を一本でも失うと位置によっては、しゃべりにくくなることがあります。

  

  

2.天然の歯と人工の歯では異なる「感じる力」

  

 自分の歯と人工の歯の大きな違いは、「歯根膜がある」ということ。この歯根膜があるとないでは、食事の楽しみが減少してしまいます。

歯根膜とは、歯と歯槽骨の間にある組織で、歯触りや歯ごたえを伝える重要な役割を担っています。この歯根膜は天然の歯にしか存在しません

  

  

  

【歯根膜の役割】

●歯根と歯槽骨を繋げる役割
歯の根元と歯を支える歯槽骨を結び付け、歯が土台から抜けないように固定しています。

 

●衝撃を吸収する役割
食べ物を噛むときや食いしばるときに、歯にはかなりの力がかかります。この噛んだり食いしばったりしたときの歯にかかる負荷を緩和してくれる、クッションのような役割を歯根膜が担っています。歯を守るために重要な役割です。

 

●センサーの役割
食べ物を噛むときに感じる歯ごたえや硬さ・柔らかさといった刺激は、歯根膜が感知し、脳に送る信号によって感じ取っています。小さな異物を噛んだ時にも、微細な刺激を歯根膜が感知し脳に伝えます。このセンサーのおかげで歯ごたえを感じ食事を楽しんだり、異物を感知することができるのです。

 

歯根膜は一度失われると自然に再生することはありません。歯が抜けるとともに歯根膜も失われ、同時に歯で感じる感覚も失われてしまいます。食事を楽しむためには、やはり天然の歯が一番です。

  

  

3.義歯(入れ歯)、ブリッジやインプラントとの違い

 

 噛みやすさ・話しやすさ・お口の中での違和感のなさなど、私たちの歯は非常に高性能で、現在の技術では天然の歯と全く同じものを作ることはできません。

  

例えば、総義歯の咬合力は歯が全部揃っている方の半分以下といわれ、おせんべいなど硬いものの食べにくさがあります。さらに、口の中で熱さ・冷たさが伝わりにくく、自然の食感を感じにくいということもあります。

  

ブリッジは、無くなった歯の両隣にある歯を土台として、橋をかけるように真ん中の歯を支えます。総義歯と比べると噛む力が強いため食生活に大きな支障を感じないことがほとんどでしょう。しかし、歯を失った部分の顎の骨が徐々に痩せてしまったり、残っている歯に頼るので残存歯の寿命が縮まってしまうというデメリットがあります。

  

インプラントは顎の骨にしっかりと金属を埋め込むので強い力に耐えられ、噛む感覚は天然の歯に近いと言われます。しかし、歯根膜がないので、噛んだ時に感じる食べ物からの感覚入力は天然の歯よりも乏しいため、食事を楽しむという面では少し物足りなさを感じることも。

  

それぞれのデメリットを挙げましたが、『天然の歯の本数を残す』とは、不健全な歯でも自分の歯を残せばよいということではありません。虫歯などを適切に治療し、歯周病をコントロールした、きちんと使える『健全な状態の歯を残す』ことが大切です。

しかしながら、ケアをしていても歯を失ってしまうこともあります。噛む・話すといった機能や、見た目を含めた『健康づくりに役立つお口』を保つためには、やはり義歯やインプラントなどが有効です。歯科医師と相談しながら、治療を進めましょう。

  

  

4.重要な予防歯科

  

 歯を失くす原因の多くは、虫歯と歯周病です。歯の調子が悪くなってしまった際には、出来る限り早く歯科を受診し適切な治療をすることが大切ですが、虫歯にならないよう予防する「予防歯科」という意識も大切です。

予防歯科は、虫歯などになってからの治療ではなく、予防のための定期的・積極的な歯科での検査やクリーニングであったり、自分自身での歯磨きなどのセルフケアを指します。効果的な予防方法として、この両方を行うことが勧められています。

  

  

超高齢社会となった日本。

心身ともに健康で日常生活を送ることができる期間である「健康寿命」を延ばすことが今後の課題となっています。

健康寿命の延伸について、歯の残存本数が多いほど、健康寿命が長くなることが近年の研究で明らかになってきました。また、歯の残存本数が少ない人ほど、認知症のリスクが高まることが分かっています。

   

歯周病は口の中だけでなく、全身の病気の発症や進行にも影響を与えます。

  

高齢者に多い誤嚥性肺炎は、歯周病菌が肺に入ってしまい引き起こされることがあります。さらに、歯周病菌により動脈硬化が引き起こされ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めることもあります。歯周病と糖尿病とは相互に悪影響を及ぼすことも分かっています。

  

予防歯科の定期検診は費用の負担はあるものの、年に数回ほどです。むし歯や歯周病になると治療のために何度も通院することになります。

予防に意識を向けることで、時間も費用も節約できるということです。

もっと広く考えると、予防歯科はお口の健康だけでなく全身の病気を予防することにつながり、将来的な医療費負担の減少、楽しく元気に過ごせる時間増大の可能性を高めることにつながります。現在から将来の生活の満足度(QOL:生活の質)を高めるということです!

  

今だけではなく、将来の健康のためにもお口のケアを欠かさないようにしましょう!

  

  

▼関連コラム

「口・歯の状態はパフォーマンスを左右する⁉」

「歯の健康管理が健康寿命を左右する?

 

  

参考

  

厚生労働省

◆e-ヘルスネット
1)「歯・口腔の健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth
2)「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-006.html
3)「口腔機能の健康への影響」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-08-001.html

◆iiha -からだの健康、お口から-
1)「歯周病は万病のもと!?お口のケアで身体いつまでも若々しく」
https://iiha.mhlw.go.jp/column20231215.html

(全て2025年1月15日利用)