2024.06.27
毎日、私たちの心と体を支えてくれている「食事」。
集中力に欠ける、イライラする、なんとなく調子が悪いなど、食べたものもその日の心や身体の状態に影響しています。
その理由のひとつとして考えられるのが、『血糖値』です。血糖値はその日の気分や体調、その先の疾病発症のリスクにも関係してきます。今回は、血糖値について、またそのコントロールに役立つ「セカンドミール効果」についてお伝えします。
1.血糖値って?
炭水化物である糖分を食事から摂取すると、体の中で消化吸収されて「ブドウ糖=グルコース」になります。グルコースは、血液中に入ってエネルギーとして生命維持や活動に利用されます。この血液中のグルコースの濃度を『血糖値』といいます。
健康な人であっても、食事を摂ると食後の血糖値は変動します。
血糖値が上昇すると、血糖値を下げようと膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血液中のグルコースを取り込むよう働きかけ、肝臓や筋肉、脂肪などに取り込まれます。
急激に血糖値が上昇すると、インスリンが通常より多く分泌されます。
血糖値が上がりすぎると、体はできるだけ早く糖を処理しようと働きかけ、通常よりもはやい速度で血糖値を下げようとします。急激に上がった血糖値が急激に下がれば、空腹を感じ何か食べたくなります。そして、また糖質を摂りすぎてしまうと、再度、血糖値が急上昇して……と、不安定な状態が続いてしまうのです。また、空腹を長く感じているような状態の時にも、同様のことが起こり糖質を摂りすぎてしまう傾向があります。
こうした食後の血糖値の乱高下は「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」と呼ばれ、眠気や集中力の低下をはじめ、イライラが続いたり、落ち込みが強くなったりするほか、食後すぐにまた空腹を感じてしまうといった不調を招きます。動脈硬化や心筋梗塞、脳血管障害にもつながる可能性があります。
糖質を含んだ食事を摂れば、誰でも血糖値は上がります。
糖質は脳や体を動かすエネルギー源であり生きていくために必要な栄養素ですので、控えすぎはよくありません。
意識すべきことは、血糖値の乱高下をできるだけさせないことです。
そこで、きちんと食べながら健康をつくることに役立つのが「セカンドミール効果」です。
2.セカンドミール効果とは
セカンドミール効果とは、最初にとる食事(ファーストミール)が、次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値に影響をおよぼすこと。
例えば、朝食が1回目の食事=ファーストミール、2回目の食事となる昼食がセカンドミールとし、朝食が昼食の食後血糖値に影響しているということです。
また、昼食と夕食、あるいは夕食と朝食の関係でもセカンドミール効果は起こります。食事に限らず、間食と食事でも同様、間食をとった次の食事の血糖値を抑えるということです。
3.セカンドミール効果を得るための食事の考え方
①欠食をしない、食事と食事の間を空け過ぎない
欠食をしたり、食事と食事の時間が空きすぎたりすると空腹時の血糖値と食後の血糖値の差が大きくなります。欠食をしないこと、また食事と食事の間が長く開いてしまう場合には、間食をすることを意識しましょう。そうすることで、セカンドミール効果の恩恵を得やすい状態をつくることができます。
②セカンドミール効果が期待できるものを食べる
セカンドミール効果についてある研究で、食物繊維が多い食事は、その食後血糖値だけでなく、その次の食事後の血糖値にも良い影響を与えると言われています。
豆類や精製度の低い穀物、キノコ類、海藻などを取り入れた食事や食物繊維が多い食事を心がけましょう。また、間食で糖質や水溶性食物繊維の摂取する量が次の食事に対するセカンドミール効果に重要な要因である可能性が示されており、間食の内容もまた重要であるといえます。
4.グルコーススパイクを予防することのメリット
①仕事や勉強のパフォーマンスUPが期待できる
食後、特に昼食後などは強い眠気に襲われ、ウトウトしてしまったことがあるという方は少なくないはず。血糖値が乱高下すると、集中力を低下させたり眠気、イライラにつながったりすることもあります。
セカンドミール効果で血糖値を安定させると、勉強や仕事のパフォーマンスにも良い影響があるといえます。
②疾病の予防
食後の血糖値が高いと、糖尿病のリスクが高まると言われています。また、長期的に血糖値の高い状態が続くと血管に負担がかかり、血管を痛めてしまう原因にもなります。
血液や血管の状態が悪くなると、動脈硬化や高血圧、心筋梗塞などさまざまな疾病のリスクを高めます。
③脂肪を蓄えにくくする
食後一時的に余剰となったグルコース(ブドウ糖)は、インスリンの働きで脂肪組織に運ばれ脂肪として蓄えられます。食後の血糖値を上げ過ぎないことは、必要以上の脂肪蓄積を抑えることにつながります。
体の中で起こっていることはすぐには把握しにくく、健康管理のために良いことだと思っていてもおろそかになりがちです。見えないからこそ、健康なうちに「自分の健康」を守るため、行動していきましょう。
忙しい朝でも、何か口にする、少し余裕があるようであれば食物繊維の豊富な食材を取り入れるといった工夫を。食事時間が長く空いてしまう時には、玄米や雑穀、豆類などを使用したお菓子や軽食を摂るもの良いですね。
近年、血糖値の計測に関して様々な方法で計測が可能になり、自分の血糖値変動の傾向を把握できるようになってきています。体を知ることから始め、どんな時に血糖値が高くなるのか対策をしてみるのも一つの方法です。
無理なく継続できるものを見つけ、健康づくりに役立てていきましょう。
参考
●大豆配合焼き菓子の血糖応答とそのセカンドミール効果に関する検討,
岩下聡,桜井政夫,早瀬秀樹,満園良一,山下大介,濱田広一郎,薬理と治療36(5):417-27(2008)
●Effect of the Intake of a Snack Containing Dietary Fiber on Postprandial Glucose Levels
by Hyeon-Ki Kim 1,†,Takuya Nanba 2,†,Mamiho Ozaki 2,Hanako Chijiki 2,Masaki Takahashi 3,Mayuko Fukazawa 2,Jin Okubo 2 andShigenobu Shibata , 食品 2020、9 (10)、1500;
●4種の間食と間食の摂取時間が夕食後の食後血糖値に及ぼす影響
増冨裕文, 古谷彰子,古谷彰子,峯下由衣,石原克之,柴田重信,平尾和子;日本栄養・食糧学会大会講演要旨集76,(202);2022.5
●e-ヘルスネット 厚生労働省
「血糖値」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-085.html
(2024年6月10日利用)