2024.02.28
1.唾液とは?
唾液(つば)は普段意識しなくても自然と分泌され、口の中が潤っている状態であれば唾液を気にする人は少ないかもしれません。実は、唾液は食べるときに役立つだけではなく、口や身体の健康も守っています。
唾液とは、耳下腺、顎下腺、舌下腺の左右3対といくつかの小唾液腺から分泌される分泌液です。健康な状態であれば1日1リットル~1.5リットルもの量の唾液が分泌されていると言われています。何かを食べたり刺激があると分泌が盛んになりますが、安静にしているときにも分泌されています。
唾液の量や質には個人差があり、健康状態や年齢、喫煙状態、ストレスや薬の内服による影響など、さまざまな理由で唾液の分泌量や質は変化します。
例えば、緊張するような場面では口の中が渇いてうまく話せなくなったり、逆に、レモンや梅干しを見た時は唾液が流れ出る感じがあったりしますよね。また、夜眠っている間は日中に比べて分泌量が抑えられます。このように、精神的な状態、環境によっても分泌量が変わります。
2.唾液の役割
唾液は口の中を潤すためだけに分泌されているわけではありません。唾液についてなかなか意識することはありませんが、私たちの健康を守り日常生活を豊かなものにしてくれています。
唾液の働きについてみてみましょう。
●食べ物を飲み込みやすくし消化吸収を助ける
食べ物を湿らせてまとまりやすくし、食べ物を柔らかく飲み込みやすい形状になるよう調整してくれます。また、唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)は、食べ物に含まれるでんぷんを分解し、胃で消化されやすい状態にする役割も。
●味を感じやすくする
唾液は、食べ物の中の味物質を溶かし、味を感じやすくしてくれています。舌にある味蕾(みらい)に唾液が味のもととなる物質を届けるため、味を感じることができるのです。
●粘膜の保護・潤滑
唾液は歯や頬や舌などの粘膜に食べ物がくっつくことを予防したり、細菌による刺激や感染などから歯や粘膜表面を保護したりします。
●口内を清潔に保つ
唾液が、口の中の細菌や食べ物のカスを洗い流すため清潔を保てるのです。
●抗菌
口の中に侵入した細菌の活動を抑えたり、口の中に存在する虫歯・歯周病の原因細菌の働きを抑えます。
●虫歯になりにくくする
何かを食べたり飲んだりしたあと、歯垢(プラーク)の中にいる細菌が食べ物の糖分を分解し酸を作り、口の中が酸性になります。酸性の状態が続いてしまうと歯の表面(エナメル質の成分)が溶け出し(脱灰)、『虫歯』ができます。この時、酸性になった口の中を中性にして虫歯の発生を防いでくれるのが、唾液です。さらに、唾液に含まれるミネラル成分で、酸によって溶け出した歯の表面を修復する役割も担っています(再石灰化)。
3.唾液不足が引き起こすトラブルと原因
多くの役割を担っている唾液。そのため、唾液の分泌量が少なくなると様々なトラブルにつながります。
唾液不足から起こるトラブル
・食べにくくなる (咀嚼・飲み込みがしにくくなる)
・味が感じにくくなる
・発音しにくくなる
・虫歯や歯周病になりやすい
・口臭がきつくなる
唾液が不足する原因
唾液分泌の低下は、不安や緊張などのストレス、シェーグレン症候群(唾液腺や涙腺などの外分泌腺組織が障害され、ドライマウスやドライアイなどが生じる臓器特異的自己免疫疾患)などの疾患、内服薬(抗精神薬や降圧剤など)の副作用としても引き起こされます。
また、カフェインやニコチン、アルコールの利尿作用や、食事量・水分量の不足により脱水が起こると、唾液の分泌が低下します。そして、咀嚼がしっかりとされていない場合にも唾液分泌が少なくなることも!
4.唾液の分泌を促すために
1.まずは日々の食事でよく噛むこと。
食事の工夫(咀嚼を促すため具材を硬めに調理するなど)
2.運動時だけではなく、日常生活においてもこまめに水分を補給する。
3.鼻呼吸を意識する(口呼吸は口の中が乾燥しやすい)。
4.お酒やたばこはほどほどに。
5.唾液腺マッサージや口・舌の運動をする。
話す・歌う・笑うなど日常的に口を動かすことも良いでしょう。
このように、唾液には私たちの健康にとって重要な役割が多くあります。
唾液の分泌が低下してしまうと、食事は食べづらく美味しいと感じにくくなり、話しにくくもなる心配も。そして口の中では虫歯と歯周病の進行が進む可能性も高まります。
まずは毎日の食事で、よく噛んで唾液をたくさん出すこと!
噛む習慣を身につけましょう!
そして、歯を守り健康的な口の状態を維持し、美味しく楽しく食べて元気に過ごしましょう。
【参考】
●e-ヘルスネット 唾液分泌
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-004.html(2024年2月20日利用)
●8020推進財団「唾液はお口のベストパートナー」
https://www.8020zaidan.or.jp/peska_osusume/202206_01.html(2024年2月20日利用)
●8020推進財団「今日から始めるオーラルフレイル対策」
https://www.8020zaidan.or.jp/oralfrail (2024年2月20日利用)