2024.2.29
急速に変化した日本の食環境
食の欧米化と工業化
戦後の急速な経済成長の中、食の欧米化や工業化が進み人類史上例を見ないくらいの速さで日本人の食生活は変わりました。
工業化技術の発達が加工食品を増やし、現代人の食嗜好へ大きな影響を与えたのです。雑誌やテレビで「やわらかい=おいしい」と表現しているのを見たり聞いたりしたことはありませんか?
ガムを噛めない6歳児
よく噛まなくても食べることができるやわらかい加工食品は、噛めない子ども、噛まない子どもを増やしました。
長年、小児の歯科検診を行ってきた歯科医師によると、粒ガムを噛めない、噛み方を知らない6歳児を診療することがあるそうです。
母親に話を聞くと自身がガムを食べた経験がほとんどなく、子どもにも与えたことがない例もみられるとのこと。
噛むことは学習して覚えるものなので、その機会がないと身につきません。また、やわらかい食品は噛む学習にはなりにくいのです。では、どうしたら噛む力がつくのでしょうか?
ゆっくりよく噛んで食べる
第4次食育推進基本計画では「ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす」ことを目標に掲げています。噛むことは大事!と知っていても、実はよく噛めていない、そんな現状が見えてきます。
よく噛んでいると答えている国民の割合は令和2年度で47.3%。第4次食育推進基本計画では令和7年度までにその割合を55%にするのが目標。
学校教育でも「食に関する指導の手引き」でよく噛む大切さにふれ、特別活動(学級活動・児童会活動・給食の時間)などでの取り組み例が示されています。
では、小学生対象の具体的な取り組みを見てみましょう。
かむかむ名人になろう!
酒田米菓の咀嚼チェックせんべいを使った、噛むことを意識させる食育授業「かむかむ名人になろう」の例を紹介します。3ステップで噛むことの意識を高める授業です。
① 噛むことのよさについて知る
② 噛む力をせんべいで調べる
③ よく噛むために具体的なめあてを立てる
噛むことはとても大切ですが、食事のたびに「よく噛みなさい!!」と注意されたら嫌になりますよね。そこで、まず「よく噛むとこんないいいことがあるよ!」と「かむってすごいよ!あいうえお」の語呂に合わせて子どもたちに知らせます。
◆あ:よく噛んで食べると、あごをよく使うのでじょうぶになります
◆い:だ液がたくさんでるので、い(胃)のはたらききを助けます
◆う:あごのうんどうで、のうも体も元気いっぱい
◆え:食べたものが、えいようになりやすく、体がげんきになります
◆お:よく噛むと、ちょうどよい量でおなかがいっぱいになって、食べすぎをふせぎます
※「歯と口から伝える食育」東山書房 より引用・改変
次に、「噛むことが大切なのはわかったけど、自分たちの噛む力はどれくらいだろう?」と問いかけ、咀嚼チェックせんべいを使って噛む力を調べます。
噛む力が充分だった子も、少し足りなかった子も、小学生はこれからも続く成長期によく噛んで食べる必要がある!と気づきを得ることが大切です。
授業の最後に給食や家庭でもできる「よく噛むためのめあて」を立てます。
・食べることに集中する
・おいしくなるまで噛む
・味を楽しむ
など子どもたちからも意見が出てきます。飲み込む前にあと5回噛んでみよう!すばやく給食の支度をして食べる時間を増やそう!など大人からも子どもたちができそうなことを促してあげてください。
記憶に残りやすい体験型の授業は、子どもたちの「よく噛もう」という気持が高まります。給食の直前に授業をし、「いただきます」の前に「よく噛もうね」と声をかけて、食べ終わったらふり返りをするのもおすすめです。
噛むトレーニング前後のチェックに
小児の口腔内を長年診てきた前述の歯科医師は、子どもの噛むトレーニング前後に咀嚼チェックせんべいが活用できるとおっしゃっています。咀嚼回数を計測するため、結果の数値を比較することができ、子どもにも分かりやすいからです。
具体的は以下の①~④の方法で進めます。
①歯科検診で噛む力の弱い子どもをスクリーニング
②咀嚼チェックせんべいで噛む力を確認
③栄養士の食事による噛むトレーニング指導と子どもの実践
④咀嚼チェックせんべいで噛む力を再確認
<学童期(6-12歳):食事による噛むトレーニング>
・食材は大きめに切って噛めるように
・火を通し過ぎず、歯ごたえを残す
・食感の異なる食材を組み合わせる
・充分な食事時間の確保
・噛みごたえのあるおやつを選ぶ
噛むトレーニングといっても、特別な用意は必要ありません。写真の鮭定食のような食事は、火を通し過ぎない大きめの食材、食感の異なる食材使うなどの工夫で、「よく噛みなさい!」と言わなくても自然と噛むトレーニングができるからです。
1回の食事に20分くらいをかけて食べてみましょう。よく噛むと食事の満足感も違ってきますよ。
おやつならシュークリームやだんごよりも、せんべいやするめなど「噛みごたえ」のあるものを上手に賢く選べるとさらにいいですね。
噛むトレーニング前後に咀嚼チェックせんべいで噛む力を調べた結果を是非比較してみてください。
▼参照コラム
●誰でも簡単!お口の健康チェック ~噛む力足りていますか?~
●「噛んで食事を食べる」ことは子どもの力を引き出す~きちんと噛んで食事を摂ることと「学習」との関係~
参考
●厚生労働省 第4次食育推進基本計画
https://www.mhlw.go.jp/content/000770380.pdf
(2024年2月14日利用)
●農林水産省 第4次食育推進基本計画 参考資料集
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/4th/refer.html
(2024年2月14日利用)
●農林水産省 第4次食育推進基本計画 リーフレット
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/4_plan/attach/pdf/index-28.pdf
(2024年2月14日利用)
●文部科学省 食に関する指導の手引きー第二次改訂版ー(平成31年3月)https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1292952.htm
(2024年2月14日利用)
●日本咀嚼学会 窪田金次郎監修、誰も気づかなかった噛む効用 咀嚼のサイエンス
日本教文社、2009
●日本咀嚼学会、咀嚼の本3ー噛むことの大切さを再認識しようー
一般財団法人 口腔保健協会 2022