2023.7.15
脱水や、熱中症などから身を守るために、水分補給は欠かせません。気温があがる夏場には、特に意識的な水分摂取が勧められます。また、運動時の水分補給は、パフォーマンスにも影響すると言われています。今回は、運動時の水分補給の重要性や、ドリンクの選び方についてお伝えします。
水の重要性
人の身体に存在する水分量は、成人の場合、体重の約60%を占めます。新生児では約80%ですが、成長により体温調節や水分代謝の機能が備わってくると成人と同程度になり、高齢者になると約40~50%になります。
体内の水には、栄養素や老廃物などの物質を溶かす「溶解作用」、老廃物や栄養素を血液やリンパ液などによって移動させる「運搬作用」、体温を調整する「体温保持」の働きがあります。水は、身体にとって非常に重要な役割を果たしてくれています。
水分の損失と身体への影響
日常生活では、汗や呼吸、尿や便などで水分は失われていきますが、運動時は大量の発汗により、更に水分が失われていきます。
体内の水分が失われることで、身体には様々な影響があります。
体内の水分損失率と主な脱水症状
また、運動とパフォーマンスの関連をみた調査では、2%の水分損失でパフォーマンスが低下すると報告されており、運動中は水分損失が2%を超えないようにすることが勧められます。
運動時の水分補給におすすめのドリンクは?
汗の成分は、水分だけではなく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルも含まれています。これらのミネラルは、神経伝達や筋収縮の機能にも関わるため、水分補給の際は、ミネラルも含まれていることが重要です。
公益社団法人日本スポーツ協会によると、熱中症対策には、塩分濃度が0.1~0.2%(ナトリウム換算で40~80㎎/100ml)の飲料が推奨されています。
また、運動中はエネルギーも消耗しているため、運動時間が1時間を超える場合は、糖質入りのドリンクがおすすめです。
スポーツドリンクの種類
摂取した水分や糖質は小腸で吸収されますが、素早い吸収のためには、胃から腸への移行も素早く行われる必要があります。そのスピードを調整するのが浸透圧です。 スポーツドリンクは、この浸透圧の違いによって、ハイポトニック飲料と、アイソトニック飲料に分けることができます。
ハイポトニック飲料
体液より低い浸透圧に調整されたドリンクです。胃から腸への移行がスムーズなため、お腹に溜まる感覚が少なく、水分が素早く吸収されるため、運動中や運動直後の摂取がおすすめです。一般的に糖質濃度は2%程度の低いものがほとんどですが、使われている糖質の種類によっては、糖質濃度も高く、低浸透圧に調整されているドリンクもあります。
アイソトニック飲料
体液と同等の浸透圧に調整されたドリンクです。糖質濃度は4~6%のものが一般的であり、吸収スピードはハイポトニック飲料よりは遅くなります。糖質濃度が高いことから、エネルギーがしっかり補給できるため、運動前の摂取がおすすめです。
水分摂取のタイミング
運動前
運動30分前までに250~500mlの水分補給をしましょう。運動前に食事や補食がしっかり摂れている場合は、水でも構いません。ミネラル(塩分)や糖質を摂りたい場合は、スポーツドリンクを活用しましょう。
運動中
のどが渇く前に、こまめに水分補給をしましょう。運動中は発汗量が多くなるため、ミネラル(塩分)が入ったドリンクがおすすめ。1時間以上の運動の場合は、スポーツドリンクで糖質も補給しましょう。
運動後
ミネラル(塩分)と糖質の入ったスポーツドリンクで水分補給しましょう。
熱中症、脱水は症状が重くなると、命に関わる危険な状態になります。適切な水分補給で、安全に運動を行いましょう。
参考
スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(公益財団法人日本スポーツ協会)
鈴木志保子,「理論と実践 スポーツ栄養学」,日本文芸社,2018