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Column

誰でも簡単!お口の健康チェック ~噛む力足りていますか?~

2023.9.15

健康はお口から

 「よく噛んで食べなさい!」とお子さんに注意したことはありませんか?噛むことが大切だと知っているお母様はたくさんいらっしゃると思います。では、なぜ噛むことが大切なのでしょうか?実は噛む力は健康寿命を左右します。健康寿命とは制限なく自由に日常生活が送れること。年齢を重ねると体の機能が徐々に低下するのと同様に、口腔機能も低下します。つまりお口の健康状態がじわじわと悪くなり、体も弱ってくるのです。

 

図1.オーラルフレイル負のスパイラル1)

  

「オーラルフレイル」という言葉を耳にしたことはありませんか?オーラルフレイルとは口の虚弱を意味し、しっかり食べられない状態のことです。オーラルフレイルになると図1のような負のスパイラルに陥る危険性があります。閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」2)でオーラルフレイルについて言及がありました。

  • オーラルフレイルが全身の虚弱につながることから、歯科専門職による口腔健康管理の充実が必要
  • オーラルフレイルの対策は、歯科界が一丸となって展開するものであり、国民と共に推進する

 

と骨太の方針2022で述べられています。これまでも口腔健康管理の充実のために後期高齢者歯科口腔健診が行われてきました。その中に口腔機能を調べる項目がありますが、咀嚼機能を調べるのは大変という専門職の声も。その方法として、ガムを使ったチェック方法やグミを使った方法があります。しかしながら、いずれの方法も口に入れて咀嚼したものを吐き出すことから、感染症対策が気になる、吐き出したものを人に見られる患者様の心理的負担など課題がありました。

 

 

せんべいで噛む力をチェックできる?

2004年に発表されている論文「煎餅を用いた食塊形成能力からみた咀嚼能力評価法」3)では次のことが述べられています。

  

【吸水性の高い煎餅の咀嚼回数を利用した咀嚼能力評価法(咀嚼回数計測法)は簡便な方法であり、個人の食塊形成能力を評価することができると考えられる。】

 

これを受け、酒田米菓では電話営業で「せんべいを美味しく食べるだけで、咀嚼機能をチェックできる。こんなせんべいがあったら利用しますか?」と歯科医院にヒアリングを行いました。架電件数約一万件のうち、約5割の歯科医院が「利用したい」と回答(2022年7月25日現在)。そこで酒田米菓は、誰でも簡単に咀嚼機能低下がチェックできる、判定用のせんべいの開発に着手しました。

 

 

咀嚼チェックせんべい誕生!

数値的根拠のあるせんべいだと導入しやすいと、歯科医師からの要望もあり、「飲み込むまでの噛む回数30回がお口の健康目安」となるせんべいの開発をしました。

  • 生地の配合
  • せんべいの形
  • 焼き具合

 

など様々な課題を乗り越えて誕生したのが「咀嚼チェックせんべい」。

完成した咀嚼チェックせんべいについて「せんべい一枚を飲み込むまでの噛む回数30回、が本当にお口の健康目安」になるか、900人規模の実証実験を行いました(秋田市歯科医師会・秋田県歯科医師会協力 2022年11月~2023年3月 50歯科医院で実施。858人分のデータを採取)。その結果、「お口の健康目安は、30回以内に噛んで飲み込む」ことがわかりました(図2)。

 

図2.年齢と咀嚼回数

 

 

   

 年代別の咀嚼回数(噛む回数)を見ると、64歳以下で95%がせんべいを30回以下で噛んで飲み込んでいることが分かります。一方、65~74歳では84%、75歳以上では73%とその割合は低下します。つまり、飲み込むまでの噛む回数が30回以下であればお口の状態は健康であるといえます。逆に31回以上の場合、口腔機能の低下が疑われるため、一度、歯科医師などの専門職に診てもらうことをおすすめします。

  

 

確かめたい「噛む力」

 せんべいを美味しく食べるだけで、お口の状態がわかる「咀嚼チェックせんべい」。ガムやグミを使った検査と違い、口に入れたせんべいは噛んで飲み込むので、吐き出さずにチェックができます。感染症対策が気になる昨今、衛生的にチェックができること、せんべいは年代を問わず好まれている食品なので、誰でも簡単にお口の健康状態を知ることができます。健康で元気に年を重ねるため、咀嚼チェックせんべいで、ご自身やお子さんの噛む力を確かめてみませんか?

 

   

参考

  1. 五島朋幸 「死ぬまで噛んで食べる 誤嚥性肺炎を防ぐ12の鉄則」
    光文社新書 2021年2月28日
  2. 内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)
  3. 本間済、河野正司、武川友紀、小林博、櫻井直樹「煎餅を用いた食塊形成能力からみた咀嚼能力評価法」新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食機能再建学
    日本顎口腔機能学会雑誌10巻2号:p151-160,2004