2023.5.25
私たちは日頃、意識しなくても口を動かし食べることができます。
生まれたときには、この「食べる」力は十分ではありません。
「噛む」ことは、哺乳から始まり離乳食を口にし、その体験を通して学び習得する機能です。
近年、どの世代においても軟らかい食べ物を多く食べるようになり、噛む回数が減少していると言われています。それにより、あごの発達が不十分で歯並びが悪くなったり、噛んだり飲み込んだりといった口腔(こうくう)機能が低下してしまったりということが多くみられるようになりました。口腔機能が低下すると、おいしく食べることや楽しんで食べることが難しくなり、健康にも悪影響を及ぼします。
小さなころに、きちんと「咀嚼(噛むこと)」を習得しておくこと、そしてその噛むという機能を維持し続けることは、生涯にわたって健康な心身を作り続けるためにとても大切なことです!
【きちん咀嚼できる】とは?
咀嚼は
①歯で食べ物を噛み切り
②唇を閉じて
③舌で食べ物を口の奥に移動させながら
④左右両方の歯をバランスよく使い、奥歯で噛んですり潰して
⑤喉に送り込み飲み込む
という一連の運動をさします。
口に入れて飲み込んでちゃんと食べているようでも、「ただ飲み込んでいる」のか、「よく噛んで飲み込んでいるのか(咀嚼できている)」とでは、大きな違いがあります。
咀嚼は、きちんと食べるうえで必要な力であるとともに、栄養摂取における重要な力ともいえます。なぜなら、咀嚼には消化吸収を助けるという、大人にも成長発達の著しい子どもにも欠かせない役割があるからです。
離乳食から始まり徐々に大人と同じような食事を食べられるようになってくると、「好き嫌いなく」「きれいに」食べることができているかという部分に目がいきがちです。
しかし、もっと目を向けるべきことは、乳幼児期にきちんと噛めているか、良い食習慣を身につけているかということです。よく噛む習慣は将来の健康状態にも影響しますし、虫歯予防、歯並びがよくなる、胃腸の働きを助ける、脳の活性化といったものにもつながっていきます。
いつもどんな食べ方をしていますか?
食べるときにくちゃくちゃを音がしていませんか?
食べ物を口からよくこぼしていませんか?
お茶やお水などで口に入れた食べものを流し込んでいませんか?
食べるときにきちんと口を閉じられないと噛むときに音が出たり、口の中の食べ物を喉の方へ送り込みにくさが生じたり、口から食べ物がこぼれたりします。口が開いてしまうのは、口の周りの筋肉が弱いことや、口呼吸、噛み合わせ・歯並びの影響や、姿勢が良くないといったことが考えられます。
また、食べながら水分をとって流し込んでいる場合は、唾液が十分に出ないため食べ物の味が感じにくかったり、噛まずに飲み込めてしまうため噛む力が育ちません。
口(口腔)の主な機能は、咀嚼(そしゃく、噛むこと)、嚥下(えんげ、飲み込むこと)、発音などです。口腔機能の衰えは高齢者に起こりやすいのですが、軟らかいものばかり食べていると、小さな子どもの場合は十分に口腔機能が発達しない、また若い世代でも口腔機能が衰えていくといったことが起こりえます。
噛まずに食べたときのデメリット
①生活習慣病や高血圧の発症のリスクアップ
噛むことで唾液が分泌され、食べたものの味をよく感じることができます。噛まなくてよい食事は味がわかりにくいため、濃い味つけになりがちです。そのため、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症や重症化を高める可能性があります。
②食欲低下、偏った栄養摂取になりがち
また、しっかり噛めなくなると、風味や香ばしさを感じにくくなり美味しさが半減します。食べることが楽しみでなくなり、食欲が落ちて、ますます栄養が偏ってしまうといったことも考えられます。
③身体の健康や心の健康にも悪影響
噛めない状態が続くと、栄養素が十分に消化吸収されずに筋肉や骨のなどがつくられにくくなったり、免疫機能、代謝といった機能が低下したりと様々なところに悪影響が及びます。特に、食べこぼしや滑舌の悪さは、家族や社会の中での孤立へと繋がることがあります。つまり、「口腔機能の低下」→「身体の健康を損なう」→「コミュニケーション能力の低下」→「社会性の喪失」という『負のスパイラル』を生む可能性もあるのです。
そのため、正しい食習慣を身につけることであったり、口腔機能を改善することは、健康上の問題だけを解決するのではなく社会との関りの改善につながり、引いては認知機能の低下の予防にもなります。
きちんと噛む習慣を身につけるポイント
①姿勢
舌を支える骨(舌骨)は、胸や背中と筋肉で繋がっています。そのため、姿勢が歪んでしまうと舌の動きや顎の位置に大きく影響します。猫背だったり、何かにもたれているような姿勢では、体が安定せず、舌がうまく使えません。姿勢が歪まないように、また足がぶらぶらしないように椅子と机の高さを調整しましょう。
②環境
食事に集中できる環境づくりをしましょう。ながら食いをしない、テレビを消す、子どもの場合には、視界に入るところにおもちゃをおかないといった工夫もしましょう。
③食形態・一口量
流し込んで食べられる 丼ものやカレー、麺類は意識して噛むようにしましょう。
小さい子どもの食事は食べる能力によって、食べ物の硬さを工夫することも大切です。
成長してからも、軟らかいものばかりではなく咀嚼しなければ飲み込めないものを摂り入れ、噛む力を育てましょう。例えば、野菜やなど大きめにカットしたり、少し固ゆでにしたり。また大きさが異なるものは咀嚼を促すので、白米にきびやひえ、たかきび、といった雑穀を混ぜて炊いたり、大豆を混ぜ込んだりするのもお勧め。栄養価アップにもなります。
④食べ方
口に食べ物を入れたら、きちんと口を閉じること。そして、舌を使い両方の奥歯でしっかりと噛めているかも意識しましょう。飲み込む前に唾液と食べ物が混ざっているか、食べ物がペースト状になっているかもポイントです。食べながら水分を良く摂るという人は、要注意。噛まないので唾液が出ずに、水で流し込んでいるのかもしれません。水分摂取は控えめに、しっかりと噛んで飲み込む習慣を身につけましょう。
⑤楽しく食べること
食習慣を身につける乳幼児期は、できるだけ家族で一緒に食事をすると良いでしょう。よく噛んで食べると味が変化していくことや噛んだ時の感覚、味、楽しさを共有することで、食べていること、また味覚の認知を促します。噛んで食べること、ゆっくりと食事をすることは楽しさや美味しさを増し、心を満たしてくれるものだということを経験させてあげることも大切です。
きちんと食べる、噛む習慣は小さい頃に作られますが、いくつになっても意識し食べ方を変えることはできます。噛むことには沢山のメリットがあります。元気な毎日を送れるよう、噛む力を育て、維持していきましょう!
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参考
1)「死ぬまで噛んで食べる 誤嚥性肺炎を防ぐ12の鉄則」五島朋幸著(光文社新書)
2)小児の口腔機能発達評価マニュアル 日本歯科医学会
第 1 版 2018.2.28.作成(2018.5.14.改訂)