2023.3.8
私たちは食べ物を栄養に変えるには、食べ物を摂りこむ、噛む(咀嚼・そしゃく)、飲み込む(嚥下・えんげ)、消化、吸収という行程が必要です。
普段何気なく行っている「噛む」ということは、実は大人にも子どもにも大きなメリットとなることがたくさん。
噛むと得する、「噛むこと」のすごい働きを3つ、ご紹介します。
1.成長や健康維持に大切なお口の健康を守り、消化を助ける「唾液」が分泌される
食べ物を口に入れ噛んでいると、じわじわ唾液がでてきますね。
唾液は1日に0.5~1.5ℓ分泌されていますが、咀嚼することで分泌量が増加します。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット 唾液分泌
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-004.html(2023年8月8日利用)
この唾液は、実にたくさんの働きを担ってくれています。
公益社団法人8020推進財団 「唾液はお口のベストサポーター ~あなどれない唾液の力~」
https://www.8020zaidan.or.jp/viewer/peskaosusume_202206_01.html(2023年8月8日利用)
他にも唾液は役割を担っていると考えられており、私たちの健康や口の状態に大きく影響しています。
唾液が分泌されないと、食べたものが飲み込みにくい、食べたものが十分に消化されない、虫歯になりやすい、口の中の衛生状態が悪化しやすい、味を感じにくいなどの状態に陥ってしまう可能性があります。
飲み込みを円滑にし味を感じ、そして、口や身体の健康状態を保つ働きを担う唾液。
噛むことでより唾液分泌が促されるので、食事の際にはしっかりと噛んで、「噛む力」を育て維持していきましょう!
2.集中力、記憶力が向上!脳が目覚める!
噛むことは「脳」へも大きな影響を及ぼします。
噛むことは、摂食や消化を助けるだけでなく、認知機能の向上など、脳の働きにも有益な作用があることが、これまでの研究でもわかってきています。さらに近年、研究で咬合や咀嚼が認知症の発症を抑える働きがあることが明らかになってきました。
しかし、そのメカニズムについては正確には明らかになっていないといいます。一説には、歯の根の周りにある「歯根膜」からの噛んだ時の刺激が、脳幹に入って大脳に影響を与えるというものがあります。
噛むことは、脳を発達させる、学習能力、記憶保持能力、また覚醒レベルをあげるといった効果が期待できます。このことから、朝目覚めてからの元気スイッチになりますし、日中の眠気覚ましになったり、集中力アップや学習効果を高めるのにも一役買います。子どもたちが元気に一日を過ごすためのサポートとなり、またスポーツや仕事、学習でのパフォーマンスアップ、そして、生涯にわたって脳の機能を維持するサポートをしてくれます。
3.心と身体を整えるサポートをしてくれる
噛むことは、自律神経系とも密接に関わっています。自律神経とは、意思に関係なく身体の機能を調整する働きをしています。
交感神経と副交感神経がバランスを取りながら身体の状態を調節していますが、このバランスが崩れることがあり、その原因として、不規則な生活によって自律神経が興奮し続けたり、ストレスによる刺激、更年期におけるホルモンの乱れ(更年期障害)、先天的要因などが挙げられます。自律神経が乱れると、頭痛や吐き気、精神的な不安や疲労感、多汗、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまいなどさまざまな症状が見られます。
噛むことはこの自律神経に作用し、心を落ち着かせたり、反対に覚醒させたりするそうです。ある研究で、安静時の「咀嚼」は交感神経刺激作用を、また興奮時には「咀嚼行為」が加わると交感神経の興奮を抑制する方向に働いたという報告があります。
噛むことは自律神経のバランスを保つことに役立ち、季節の変わり目や生活の変化などによる心身へのストレスを軽くしてくれることも考えられます。
実は、この自律神経のバランスを「唾液」で知ることもできます。
唾液には、副交感神経が優位でリラックスしているときに出る「サラサラ唾液」と、交感神経が優位でストレスや興奮しているときに出る「ネバネバ唾液」の2つがあります。唾液のバランスがよく、口が潤っているように感じる状態は自律神経が整っているということです。
子どもの成長のため、また健康維持・増進のため、仕事や学習・スポーツなどでよりよりパフォーマンスを発揮するため、「噛むこと」を意識していきましょう。
食べない(欠食)、軟らかいものや液体、サプリメントを食事の代わりにすると咀嚼機会が減ってしまうので、そればかりではなく歯ごたえのあるものを摂り入れていきましょう!
参考
1)咬合・咀嚼が創る健康長寿
小林 義典,日本補綴歯科学会誌 2011 年 3 巻 3 号 p. 189-219,依頼論文
2)咀嚼が脳の発育を促進する─そのメカニズムを探る─
永井俊匡、朝倉富子,日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.) Vol. 52,No. 2,126~128(2019)
3)咀嚼行為の自律神経調節効果:若年女性におけるガム咀嚼効果の検討
宮澤洋子,高田晴子,橋本和佳,服部正巳; 教育医学 第62巻第2号:336-345,2016